top of page

Resarch & Shooting Note

馬 静怡  制作ノート 2025年度前期

April 2025

一、撮影対象と素材(Motifs & Materials)

今月は花卉と人物を主な撮影対象とした。植物園にて様々な種類の花を撮影し、室内では人物のポートレートを中心に素材を収集した。いずれの素材も、その質感やフォルムの特徴を活かして、視覚的な重なりや感覚的な対比を狙った。

 

二、撮影技法と手法(Technique & Method)

  • 撮影方法:自然光を中心とした手持ち撮影

  • 使用機材:iPhone、RICOH GR IIIx

  • 撮影環境・条件:
     - 屋外(植物園):晴天、午前〜午後にかけての自然光下での撮影
     - 室内:窓からの自然光を活かしたライティング

  • 編集手法:Adobe Photoshopを用いて複数の素材をレイヤーで重ね合わせた。マスク処理を使って輪郭を馴染ませたり、透明度の調整によって素材同士の境界を曖昧にし、花と人物の間に感覚的なつながりを持たせた。

 

三、作品分析と視覚的メモ(Visual Notes)

画像ファイル名:

 

この作品は、赤いユリの花弁と人物の横顔を重ね合わせたものである。花の流れるような形状が人物の頬の曲線と呼応するように配置されており、両者の境界はソフトなマスクでぼかして融合している。花の鮮やかな赤と肌のナチュラルなトーンが混ざり合い、生命感と官能性の共存を試みた。

四、制作上の課題と改善点(Issues & Reflections)

・人物と花の素材を合成する際、光の向きや強さの違いによって違和感が生じることがあった。
・素材選びの段階でより統一感のある色調や構図を意識する必要があると感じた。
・同一画面内での質感の調整に時間がかかるため、Photoshopのブラシやフィルターの使い方をさらに習得する必要がある。

 

五、次の展開と試み(Next Steps)

・来月は植物や人物以外の素材(布、金属、水など)も試し、異なる質感の融合を探る予定。
・より抽象的な合成イメージに挑戦し、見る人の感覚に直接訴えかけるようなビジュアル表現を目指したい。
・編集段階での「透明感」や「空気感」の演出に重点を置き、画面全体の呼吸のようなリズムを生み出すことを模索する。

 15  .May  2025

一 書籍の概要

今週は、花を主題とした写真集として、荒木経惟の『花曲』と蜷川実花の『Self-image』(花のシリーズ)を読んだ。 『花曲』では、花の開花から枯れ、腐敗していく過程が丁寧に捉えられており、湿潤や裂け目、黒ずみといった質感を強調することで、花がまるで皮膚や臓器のように感じられる。写真は死や性愛、孤独と結びつき、どこか私的で情緒的な視線が貫かれている。 一方、『Self-image』に登場する蜷川実花の花は、極彩色で構成され、鮮烈な色彩と密度の高い構図によって、花そのものが感情や存在を主張しているように感じられる。ここでは、花は受動的な存在ではなく、主体的かつ能動的に「感じる身体」の象徴として機能している。

二 自身の感想

荒木の花には、静かで湿った官能性があり、感情の終わりや時間の儚さが染みついている。一方で蜷川の花は、生命力とエネルギーに満ちており、どちらも異なる形で“セクシー”を表現している。 私はこれまで、湿潤、柔らかさ、皺といった感触に注目してきたが、蜷川の色彩と言葉を選ばないビジュアルの力強さにも魅力を感じ始めている。二人の表現を比較することで、「性的であること」は抑制的なものにも、開放的なものにもなり得ると再認識し、今後の制作においてその中間にある揺らぎを探っていきたいと感じた。

三 研究への示唆

この二冊の作品から得た最も大きな示唆は、身体を直接写さなくても、自然物の質感や変化を通じて“身体の感覚”を表現できるという点である。 • 画面構成について: 荒木のように余白と時間性を強調する構図、蜷川のように密度と色彩を最大限に押し出す構図、どちらも試したい。色味においては、今後あえて高彩度の部分を導入し、官能性の多様な側面を検討する。 • 意味構造について: 花や果実は、文化的・神話的文脈を背負う“身体の代理”として、ジェンダーの枠を超えた表現が可能であると実感した。特に、「見る」ではなく「感じる」ことを目的とした視覚表現において、これら自然物が持つ有機性は極めて有効だと再確認した。

25.may 2025

一、撮影対象および素材


本週は植物園の温室および付設の小型水族館にて撮影を実施した。撮影対象は以下の通りである。

  • 花類植物:ユリ(Lilium spp.)、ラン(Orchidaceae)、多肉植物(Succulents)、エアプランツ(Tillandsia spp.)

  • 海洋および両生類生物:海藻(Marine algae)、クラゲ(Jellyfish)、ヤモリ(Gecko)等

 

二、撮影手法および技術的詳細


使用機材:RICOH GR III
撮影環境:温室内の自然光および人工光、水族館内のガラスによる反射光を利用
撮影手法:マクロ撮影により、被写体の細部、特にテクスチャー、膜面、接触点などのディテールを強調
画像処理:彩度およびコントラストを調整し、湿潤感、肉感、滑らかさの視覚的表現を強化した

三、創作における考察および意図
本撮影を通じて、自然物である植物および海洋生物を介し、「身体感覚の移行」および「視点の流動化」という概念を追求した。
具体的には、従来の身体の器官・非器官、生物・感覚という二項対立の境界を曖昧化し、身体経験が性器や性別構造に依存しない新たな感知次元を模索している。
撮影した対象のテクスチャー、皺、柔軟性、圧力感などの触覚的特徴を通じ、身体の非言語的な感覚経験の表象を目指した。

 

画像ファイル名:

10.June 2025

一、撮影対象および素材

今週は自宅で、スイカとモモの2種類の果物を撮影した。どちらも表面や断面に湿り気や柔らかさ、裂けやすさがあり、皮膚や汁、身体の開口部を連想させる。特に熟れていたり、切り口がある状態だと、甘さと腐敗の境目のような質感が出やすいと感じた。

二、撮影手法および技術的詳細

使用機材:RICOH GR III
撮影環境:自宅室内、窓際の自然光、背景に白紙や布を使用
撮影方法:マクロモードで近距離から、果皮・果肉・裂け目・果汁などを撮影
編集処理:明るさと色味を少し調整し、素材の質感をなるべくそのまま残した。過剰な加工はしていない。

三、創作における考察および意図

今回は、果物が裂ける・押される・液体がにじむ瞬間を記録することを中心にした。そういった状態の中に、触覚や身体的な感覚につながる要素があると思ったから。
スイカの赤い果肉や果汁は、内部構造や血を思わせるし、モモの毛のある皮や柔らかく崩れた部分は肌のように見えることもある。特定の身体部位を表現したいわけではなくて、ちょっとエロティックだけどはっきり言葉にできない感覚を残すことを目指した。

 

画像ファイル名:

bottom of page